4.音を大きくする

4.5.実際に音を出してみよう

4.5.8.ミキサーに音を入れる

さぁ、いよいよミキサーの操作だ。初めてミキサーを触る人は、スイッチやツマミの多さに 戸惑うに違いない。ここでいきなりそのすべてを説明したりしないからね。ここでは ミキサーにマイクからの電気信号が入ってくるところから、パワーアンプに出て行くところまでの 大まかな信号の流れと、基本的なレベル調整について説明する。

レベルとは電気信号の大きさのこと。つまり、ミキサーの中で電気信号の大きさをどうやって 決めていくかということだ。まぁ、適当にやっても音は出るんだけど、レベル調整の基本を いい加減に覚えちゃうと、後々のミックスの出来にまで影響するからね。やっぱり、基本は 抑えとこうというわけだ。

さて、ミキサーは大きくチャンネルコントロール部と、マスターコントロール部に分けられる。 今回操作するのはチャンネルコントロール部では以下の3つ、しかも、今回はマイク1本だけ なので、ミキサに向かって1番左の列(CH1)だけだ。


マスターコントロール部では

の1つだけだ。

ツマミはいっぱいあるけど、レベル調整の基本となるのはこれだけだってことだ。 後のツマミは、とりあえず付属品とでも思ってくれていい。

前置きはこのくらいにして、実際の操作に進もう。次のa.〜c.の操作をしてほしい。

a.マスターコントロール部の[STマスターフェーダー]を0まで上げる。
b.チャンネルコントロール部のCH1の[チャンネルフェーダー]を0まで上げる。
c.チャンネルコントロール部のCH1の[STスイッチ]を ON にする。

次に、マイクを手に取り、マイクに向かって普通に話しながら、ミキサー右上の レベルメーターを見ながら、

d.チャンネルコントロール部のCH1の[GAINコントロールツマミ]を少しずつ上げる(右に回していく)。

レベルメーターが0付近で点灯するようになるまで[GAINコントロールツマミ]を上げる。
[GAINコントロールツマミ]をいくら上げてもレベルメーターが点灯しない場合は、 機材の故障を除いては、マイクの接続が間違っているか、ミキサーの電源が入っていないか、 操作する箇所を間違っているか、そのいずれかだろう。もう一度はじめからやってみてね。

めでたくレベルメーターが0まで点灯した人は、次に進む。

e.大きな声を出す、叫ぶ、声を張る。とにかく大きな音をマイクに入れてみる。
f.その時、レベルメーターの一番上の PEAK が点灯するか確認する。
 ([GAINコントロールツマミ]のすぐ下の丸い PEAK ランプで確認してもいい)
g.もし点灯するなら、e.の状態で点灯しなくなるまで、少しずつ[GAINコントロールツマミ]を下げる。
 (たまに点灯するくらいならOK)

以上で、CH1につながったマイクのレベル調整は終了だ。これでマイクで拾った音(マイクから出力された 電気信号)は正常にミキサーに入ったことになる。そして、STマスターフェーダーをどこまで上げるかで、 バックパネルの[L][R]コネクタから電気信号が出力される信号の大きさが決まる。

次は電気信号(以下、信号)の流れに沿ってスイッチやツマミを追ってみよう。

CH1に入力されたマイクからの信号は、はじめに[GAINコントロール]を通過する。前にミキサーは プリンアプの役割があるって話をしたよね。そのプリアンプに相当するのが、この[GAINコントロール]だ。 GAINを上げれば上げるほど信号は増幅され、大きくなる。そして処理しきれないくらい大きくなると PEAKランプが点灯して教えてくれる。大きくし過ぎると徐々に音が歪んできて、更に大きくすると 「音が割れる」という状態になる。ここがレベル調整の要だ。PEAKランプが点灯しない範囲で、できるだけ 信号を大きくするというのがレベル調整の基本だ。

[GAINコントロール]でレベル調整された信号は[チャンネルフェーダー]を通過する。今回は、はじめに [チャンネルフェーダー]を 0 に設定したまま動かさなかったよね。[チャンネルフェーダー]は そのチャンネルの信号をどのくらいの大きさで、マスターコントロール部に出力するかを決める 役割をしている。そして、このフェーダーが 0 の位置にあるっていうことは、[GAINコントロール]で レベル調整した信号を、そのままの大きさ(レベル)でマスターコントロール部に出力することを意味している。 一般的にフェーダーが 0 の位置は規定値とも呼ばれ、一番微妙なレベル調整(フェーダーワーク)が 出来る位置でもある。

[チャンネルフェーダー]がマスターコントロール部に出力する大きさを決めるといっても、フェーダーを 上げるだけでは出力されないようになっている。チャンネルコントロール部とマスターコントロール部の 間には門があって信号の流れを制限しているのだ。それが[STスイッチ]だ。[STスイッチ]を ON に することにより、その門が開き[チャンネルフェーダー]でレベル調整された信号が、マスターコントロール部の [STマスターフェーダー]に送られることになる。

そのようにしてマスターコントロール部に送られた信号は、[STマスターフェーダー]を通過して バックパネルの出力コネクタ[L][R]から出力される。ミキサーからの最終的な出力信号のレベルは [STマスターフェーダー]で調整される。このフェーダーも 0 の位置にある時には、その前の [チャンネルフェーダー]の音をそのままのレベルで出力する。

以上説明したように、ミキサーに入力された信号は、以下の経路を通ってミキサーから出力されるというわけ。

Atsushi Hirai; 2006-01-01 open; 2006-01-01 update Mail to