[4.1.空間の大きさを制限する]の内容を思い出してほしい。同じ音量で音を出しても、音を出している空間の
大きさによって、大きく聞こえたり、小さく聞こえたりするということだった。このように、まったく同じ音が出ていても、
空間の大きさによって聞こえる音が違ってくるというのは、日常的にも容易に体験できる。このことをもう少し掘り下げて
考えてみよう。
空間の大きさで音が違って聞こえるのは、どういう理由からだろうか?
直接音と残響音を分けて考えてみたい。直接音というのは、音の発生源から直接耳に届く音なので、
空間の広さにかかわりなく、発生源が同じで、発生源から耳までの距離が同じなら、いつも同じはずだよね。
だとすると、音が違って聞こえる理由は残響音にあるはずだ。
理由のひとつは、空間が小さくなればなるほど、壁・床・天井などのお互いの距離が近いために、
音が反射しやすくなるためだ。反射しやすくなるということは、それだけ残響音が増えるし、残響音が聞く人の耳に
届くまでの通り道が複雑になる(響き方が複雑になる)ということだ。これは、空間の大小だけではなく、
その空間がどのようなかたちをしているかにも因る。その空間は体育館のようにま四角なのか、ドーム型なのか、
コンサートホールのようなかたちなのか、ということだ。そのような大雑把な形もそうだが、壁や天井に
凹凸があるのか、平面なのか、曲面なのかも大きく影響する。
ふたつめは、壁・床・天井など、残響音に影響を与えるモノの材質だ。すなわちそれらがコンクリート製なのか、
木製なのか、大理石なのか、ウレタンなのか・・・etc.ということ。わたしたちの身の回りにあるそれらのモノは、
音に対する特性というものを持っている。遮音特性や吸音特性と呼ばれるものだ。それらを総称して音響特性とも言う。
簡単に言うと、遮音特性とは音をどれだけ遮ることができるかを表す特性。つまり、遮音特性が良いということは、
そのモノでできた壁に音をぶつけても反対側に漏れにくい(透過しにくい)ということだ。吸音特性とは、
音をどれだけ吸い取ることができるか(反射させないか)を表す特性。つまり、吸音特性が良いということは、
そのモノでできた壁に音をぶつけても跳ね返ってくる音が少ない(反射してくる音が少ない)ということだ。
まぁ、良い悪いというのはどういう立場に立つかによってかわるから、あまり適切な表現ではないけど、ニュアンスは分かるよね?
そんなな訳で、モノというのは全て、その素材特有の音響特性をもっているので、空間を構成している素材が変われば
残響音も変わってくる。すなわち、聞こえ方が変わってくるということ。
以上、まとめると、音の発生源が同じでも、空間(会場)によって音が違って聞こえるのは、次の2つの理由による。