6.実際のPAの流れ

6.1.事前準備

6.1.1.イベントの概要

そのイベントがどのようなものなのかがわからないと、見当違いの段取りをしてしまうことになる。 音響という仕事を実現するためには、そのイベントの概要を知っておくことも大切なのだ。

目的
そのイベントが開催される目的は何なのか。 演劇やコンサートのように、お客様にショーや演奏を楽しんでもらうことを目的としたものか。 講演会のように、何か大事な話を大勢の人に伝えるために行なわれるのか。 お祭りのように、地域の人々とののコミュニケーションを目的として行なわれるのか。 主催者(依頼主)がそのイベントで何がしたいのかを理解できればベストだ。 その目的の違いによって、PAの何が変わるのか。音の作り方が変わるのだ。 話をじっくり聞かせるような音作り、派手な音作り・・・。そしてそれは、 音質だけの話ではなく、時間経過に伴う音量の調整なんかも含まれる。 目的だけの話ではなく、本番での周りの雰囲気を読むことも必要になってくる。 最もこれは音響担当が独断で決められるものではなく、主催者(依頼主) と認識を合わせながら決めていくことが大切だ。毎回依頼されているというような 間柄だとツーカーでわかってくるかもしれないけどね。

開催日時

これがわからないことにはスケジュールの立てようがない。しっかりと確認しておきたい。

これは最も基本的な項目だが、音響担当としてはこれだけでは不十分だ。 時間的なことについてはこれくらいは最低確認しておかなければならない。 実際には会場でセッティングを行なうのは音響だけではなく、照明や舞台など各部門で セッティングがなされていく。時間が詰まっているときなどは、その辺もよく連携して 時間調整していかなくてはならない。特に会場を借りて行なう場合は、撤収完了の時間には 気をつけなくてはならない。時間オーバーは厳禁だ。

開催場所

仕事を請けておいて当日になって「あれっ場所どこだっけ」なんていう人はいないと思うが、 一応あげておく。初めて音響を担当する会場だったら、その会場で響きやすい帯域とか 会場内の場所による聞こえ方なんかをリサーチできればある程度の予測が立てられる。 あと、合わせて機材の搬入口、搬入経路なども要チェック。特にホテルなど特殊な環境で 行なう場合にはよーくチェックしておこう。搬入の時に厨房の中を通らされるなんてことも・・・。

会場の広さ、席数

この会場の大きさによって、使用されるパワーセット(メインスピーカーやパワーアンプなどの総称)の規模がほぼ決まる。 一般的に大出力・大容量のパワーセットほど大きく重くなる。大は小を兼ねるかもしれないが、 特に持込で使う場合は、適材適所、その会場の大きさに見合ったパワーセットが一番効率がよい。 それと、大事なのは自分が請け負える規模のイベントなのかということだ。請け負えないと判断した場合は 素直にプロに依頼しよう。そのためにプロの業者がいるのだから。

演目・出演者の構成など
ステージ上で何が行なわれるのか、演劇なのか、コンサートなのか、講演なのか・・・etc.。 ステージの構成は?どんな道具(大道具、小道具)が置かれるのか? 出演者は何人で、使われる楽器にはどんなものがあるのか・・・etc.。 それによって必要なマイクやマイクスタンドの種類や本数、モニタースピーカーの数、回線の数などが決まる。 回線とはミキサーに入ったり出たりするケーブルのことで、「インプットで20回線使用する」とか、 「アウトプットでは8回線使用する」などという。回線の数が決まれば使用するミキサーもそれに応じたものが 必要になる。もしかしたら、準備できるミキサーに制限がある場合は、回線数を絞り込まなければならなくなるかもしれない。

客層(年齢層)

さらに、そのイベントにきてくださる客層や年齢層も知りたいところだ。 老人介護施設で行なわれるのでお年寄りの人が中心だとか。 お客様の8割がシニアエイジの奥様たちだとか。 高校の学園祭でほとんどが10代の学生さん達だとか。 はたまた幼稚園児とその保護者が中心だとか。 それによって、適正な音量が違ってくるっていうのはわかるでしょ。 帯域ごとの音量のバランス(特に低域)もそれに合わせて変えた方がよりベターだ。 また、BGMも任せられた場合、用意するBGM用の曲の選択だって大いにかわってくる。

収録の必要は?

ここではPAということで話を進めているが、そのイベントの内容を収録する必要があるかどうかもポイントになる。 収録が必要となれば、どんなレベルの収録を主催者が望んでいるかを、はじめのうちに明確にしておいたほうがよい。 状況記録的な収録でよければ、ミキサーのアウトを録音すればよいので、話は簡単だ。記録メディアは何がいいのかくらいは きちんと聞いておこう。その際、会場で聞こえているそのままの音では収録できないということを、あらかじめ 説明しておこう。前にも話したように、ミキサーからの出力は会場の響きを補正することを考えて、響きすぎる帯域の音を 削ったり(小さくしたり)している。だから、たいていの場合、ミキサーの出力をそのまま録音すると、会場で聞いているより やせた音になってしまうのだ。なかなかわかってもらえないこともあるけどね。PAではその程度の収録しか出来ないことを しっかりと認識しておこう。それでも出来るだけいい音で収録して欲しいと思うのが人情というもの。 それがどの程度まで出来るかはミキサーの腕にかかっているわけだ。出来ないといってしまえば腕はそのレベルで止まってしまうぞ。

Atsushi Hirai; 2006-01-01 open; 2006-01-01 update Mail to