イベントの概要がわかったところで、そのイベントでPAを行なうための準備に取り掛かろう。 順序は行なう人によっても状況によっても変わると思うが、以下のようなことが考えられる。
依頼されているイベントの規模(会場の大きさや収容人数)により、どのくらいのパワーセットが 必要かということだ。 数十人クラスなのか、数百人クラスなのか、一千人クラスなのか、はたまた数万人クラスの イベントなのかそれによってどの程度のパワーアンプやスピーカーシステムを使えばいいかということ。 依頼を受けた段階で自分が主体となって出来る規模なのかどうかは、経験で判断できるだろう。 決して無理はしないこと。少なくてもここでは一千人を超えるようなイベントは想定外だ(^^; また、イベントの規模だけではなく、PAがどのような状況で行なわれるかもシステムの規模を決定する 大きな要因となる。つまり、話はいきなり小規模になるが、結婚披露宴やお祭りなどワイワイガヤガヤとした中でのPAなのか、 講演会や、クラシカルなコンサートなどの比較的静かな雰囲気の中でのPAなのかということである。 定常的に行なわれているイベントで、前任者からいつもこのシステムでやっているというような 引継ぎを受けた場合などはあまり考えなくてもよいことだが、新しい場所で行なうような場合には 考えなくてはならない。それが手持ちの機材で足りない場合はレンタルするとか、他の人の手に 委ねるとか、考えなくてはならない。主催者が最終的に望んでいるのは、音響担当者に任命した人が自分で出来るかではなく、 そのイベントを如何に成功させるかだからね。
インプットの回線数というのは、ミキサーの入力がいくつ必要かということ。マイク入力は基本的に モノラルなので、マイク1本の入力はは1回線と数え、シンセなどのステレオ出力の楽器をミキサーに そのままステレオで入力するにはLチャンネルで1回線、Rチャンネルで1回線、合計2回線必要になる。 CDなどをミキサーに入力する場合も同様に2回線必要になる。ステージ上のボーカリストや コーラスする人の数、楽器の種類によって、使用するマイクの本数やライン入力の数を計算するのだ。 ステージ上ではなくても、BGM用CDの入力チャンネルだって必要だし、エフェクターを使う場合は エフェクター出力を入力するチャンネルも必要だ。また、できれば予備の空きチャンネルもあった方がいい。 それらを総合して計算し、何チャンネルの入力を持ったミキサーが必要かを考えるわけだ。場合によっては 使えるミキサーがひとつしかなくて、そのミキサーの入力チャンネル数に合わせてステージ上で使用する マイクの本数をアレンジする必要だってあるかもしれない。必要に応じて依頼主と相談しなければ ならない場面も出てくるだろう。そうやって決定されたミキサーのインプット回線を表にまとめたものを 「インプット回線表」という。
アウトプットの回線数というのは、ミキサーからの出力がいくつ必要かということ。メインのスピーカーを ステレオで鳴らす場合は2回線必要になり、ステージ上でモニタースピーカーを使用するのであれば、 モニタースピーカーの数だけ回線数は増えることになる。また、ステレオで録音するとなれば出力は 更に2回線必要で、館内放送設備(小屋送り)がモノラルで必要ならば更に1回線、ビデオ収録も行なわれていて そこにもステレオで出力しなければならないなら更に2回線必要になる。このように自分がメインやモニター スピーカーに送る出力だけでなく、様々な出力が必要になる場合がある。ミキサーから直接何回線出力 できるかは、ミキサーの仕様によるのできちんと把握しておかなくてはならない。ミキサーからの直接 出力だけでは足りない場合は1つの回線をケーブルで2つに分けるとか(分岐)、分配器を使って 回線数を増やすとか、メインスピーカーをモノラルで鳴らすとか、モニタースピーカーを減らすとか、 色々考えなくてはならない。それらをまとめたものを「アウトプット回線表」という。
メインのミキサー卓の位置をどこにするかということ。客席の配置、通路の位置、ミキサー卓とステージ間の ケーブルの引き回し、メインスピーカーから出る音をコントロールするのに適した位置、それらを 考慮して最終的に決定することになる。会場によってはケーブル引き回しの経路が決まっていてそれ以外は 許可されなかったりするので、その会場とも相談しなければならない。また、当日設置して、ケーブルを 引き回したときに、「あっ。ケーブルが届かない」なんてことにならないようにきちんと計算しよう。 考慮した結果、客席を何席かつぶして、そこに設置するような場合は必ず主催者と要相談だ。 客席をつぶすということは、それだけ収入が減るということだからね。 もちろん、ミキサー操作をする上で一番いいのは、たいてい客席中央ちょっと後方寄りの席だろう。 しかし、様々な状況によりそこに設置できない場合も多々ある。状況によっては最後列の隅っこかもしれないし、 メインスピーカーの音が直接聞こえない舞台袖でミキサー操作をしなければならないこともあるだろう。 そんな中から工夫し学ぶことは山ほどある。
メインスピーカーはステージ上のどこに置くのか。スタンドに立てるのか、台の上に乗せるのか。 各楽器の位置はどこか、それによってモニタースピーカーの配置を考える。 各楽器収音用に立てるマイクの種類、マイクスタンドの種類、ワイヤレスマイクの有無、本数。 全体的なステージの配置などは音響担当というより、舞台アレンジなの問題なので、その配置を 受け取って、マイクやモニタースピーカーの配置を考えるというのが音響担当の役割になる。 それらの楽器や人などの配置を表したものを「仕込み図」という。 仕込み図にはたいていそのイベントで使用する楽器や機材などがあらかた記載されているので、 会場を借用する場合にはその会場との打ち合わせに必ず必要となる。
今までにも書いてきたが、これは重要。そしていままでは、家庭用のコンセントから電源を取ることしか 書いてこなかったが、きちんとしたステージのある会場を借用する場合には普通のコンセントから 電源を取ることはまれである。一口にコンセントといってもいろんな種類があって、 普通わたしたちが目にする家庭用のコンセントは並行型コンセントという。 その他に舞台照明で使われるのは通常C型といわれるコンセント。 音響用の特別のコンセントというのはなく、通常C型コンセントを並行型に変換してもらうことになる。 よって、電源の確保にも事前に必ず打ち合わせをしておく必要がある。 また、客席や舞台袖なんかにも壁コンがあったりするが、係りの人が壁コンからとってもいいよといわない限り、 近くにあるからといって、無断で壁コンから電源を取ったりしてはいけない。会場では電源容量を超えないように 係りの人がきちんと管理しているので、必ずそれに従うこと。
これは機材の運搬をどうするかといこと。運搬はたいてい車を使うということになるので、 自前の車でいけるのか、レンタルが必要なのか、いづれにしても手配が必要。また、音響機材というのは結構重い。 ということは人手がいるということだ。特に会場での搬入・搬出の際には人手が必要なので、主催者と相談して 必要な人手を確保できるようにしておこう。ここでもたついていると後の機材のセッティングに しわ寄せが行くことになる。
この他にも、イベントの中でポン出しが必要な場合にはその準備や練習も必要だろうし、 カラオケを使用するコンサートの場合はそのポン出しの準備や練習も必要になってくる。 こうした様々な準備を経て当日に臨むことになる。
Atsushi Hirai; 2006-01-01 open; 2006-01-01 update Mail to