「エス エヌ ヒ」と読む。英語では Signal/Noise Ratio と表される。Signal は信号、Noise は雑音、
Ratio は比(比率)、なので、直訳すると信号と雑音の比率ということだ。つまり、信号の大きさを雑音の大きさで
割ったものが S/N比 と呼ばれる。その信号の大きさとは、マイクから出力される電気信号の大きさのことだ。
もちろん入力される音の大きさによって出力される信号の大きさも変わる。通常S/N比を計算する時には
そのマイクが歪まないで出力できる電気信号の最大の大きさを使う。ノイズの大きさはそのマイク固有の
大きさなので、出力される電気信号が大きかろうが小さかろうが関係なく、一定の値だ。一般的に、
ノイズの大きさに比べて電気信号の大きさが桁違いに大きければ、ノイズなんて気にならないよね。
カセットテープを聴くときのことを考えるとよくわかると思う。カセットテープの持つあの「シャー」
というノイズはMDなど今主流のデジタルメディアと比べるとかなり大きい。
もし、テープに小さい音で録音されていたとすると、「シャー」というノイズはかなり気になるだろうし、
逆に大きい音で録音されていれば、「シャー」というノイズはさほど気にならなくなる。
S/N比という言葉を使えば、前者はS/N比が悪い(S/N比が小さい)状態で聞いていることになり、
後者はS/N比が良い(S/N比が大きい)状態で聞いているということになる。
また、カセットテープとMDを比べた場合、カセットテープはS/N比が悪い、MDはS/N比が良い
ともいえる。
更にもう少し考えてみる。S/N比が良い(S/N比が大きい)ということは、小さい音でもきちんと聞こえると
いうことだ。ちなみに、再現できる「最も小さい音の大きさ」と「最も大きい音の大きさ」の差を
ダイナミックレンジという。S/N比が良くなれば、おのずとダイナミックレンジも広がる。
このダイナミックレンジが大きいとそれだけ表現の幅が広がるってわけだ。マイクだけに限らず
全ての機材において、このS/N比とダイナミックレンジというものがある。今まで見てきて分かるとおり、
様々な機材が組み合わされて一つの音響システムが出来上がる。PAシステムならば、マイクから
スピーカまで、録音システムならばマイクから記録されるメディア(テープ、CDなど)までが
一つのシステムとなる。そして、そのシステム全体のS/N比やダイナミックレンジの良し悪しは、
そのシステムの中に組み込まれている機材の最も悪い値に制限される。つまり、どんなに一部の機材が
広いダイナミックを持っていたとしても、システムの中にそれより狭いダイナミックレンジの機材があれば、
システムのダイナミックレンジはその狭いダイナミックレンジになってしまうということだ。
ちょっと話を広げすぎたかもしれないけど、システムを組む時にはバランスのいいシステムを
心掛けたいものだ。もちろん使う人の技量もそのシステムには含まれる。