このイコライザーを使っての音場調整はスピーカーチューニングとも呼ばれる。 調整方法は実に人それぞれ、一概にこれがベスト!とかこの方法やっとけば間違いない! というような調整方法はないといっていい。みんな経験を積み重ねて自分なりの調整方法を身に付け いっているのが実情だろう。会場によって響きは千差万別。室内だけならまだいいが、 野外の場合だってある。ミキサースピーカーなど機材一つ一つにも周波数特性があるので、 元の音が同じでも機材が変われば、出る音もまた違う。そんな様々な状況の中で、 周りの人を納得させる音が出せなければ、一端のPA屋さんとは言えない。 それを実現させる方法のひとつが、これから説明するスピーカーチューニングなのだ。
その説明をする前準備として、「ハウリング」というものについて説明したい。
ハウリングというのはマイクから入った音がスピーカーから出ている時にだけ起こる現象で、
スピーカーから「キーーーン」とか「ブォォォーーーン」とか、尋常でない音が出ることをいう。
よく音量を上げ過ぎたり、マイクを持ってスピーカーの前に立った時に起こったりする。
マイクに入ってくる音は声とか楽器の音のようにマイクで拾いたい音だけではない。
その周りの音、特にスピーカーから出る音も入ってくる。要するに目的以外の音も
マイクに入ってしまうわけだ。PAをやるからには防ぎようのないことだが、
それがハウリングの原因のひとつになる。音量を上げれば上げるほど、その目的以外の音が
マイクに入る割合が多くなり、その結果、ある特定の周波数帯域の音だけが強調されてしまうことがあるのだ。
それがハウリング。
それが比較的高い方の周波数帯域で起きれば、「キーーーン」というような音に聞こえるし、
比較的低い方の周波数帯域で起これば、「ブォォォーーーン」というような音に聞こえるわけだ。
また、最終的に客席で聞く音の周波数特性というのは、
・元の音(声とか、楽器の生音)の周波数特性
・マイクからスピーカーまでそれぞれの機材の周波数特性
・会場の持つ響きの周波数特性
が互いに影響しているということは今まで勉強してきた通りだ。その様々な周波数特性の組み合わせも
ハウリングに大きな影響を及ぼす。
このハウリングに対してもGEQによるスピーカーチューニングである程度対処できる。すなわち、 スピーカーチューニングには2つの仕事を兼ねているということ。ひとつは「音場補正」という 会場の響きを調整する仕事。もうひとつは「ハウリングの予防」という仕事である。 これから4つの方法を説明するが、ほとんどの場合、どれかひとつの方法で調整するというよりも、 自分なりにいろんな方法を組み合わせて調整を行なっている。
また、スピーカーの配置や向きも調整の重要なポイントになってくる。多くの場合、スピーカーからの 直接音が、客席全体に渡って届くような配置や向きが望ましい。直接音が届かない場所では、 当然間接音の割合が多くなる。いくらGEQでスピーカーの音質を調整しても、直接その音が届かなければ 効果は少なくなるということだ。そればかりではなく、客席によって聞こえる音にムラができるということなので、 あまり好ましい状況とはいえないよね。まぁ、据付のスピーカーを使わざるを得ない場合は 仕方のないこともあるけどね。どんな会場でも据付のスピーカーがベストポジションに付いているとは 限らないのだ。スピーカーの配置や向きが変更できる場合は、そのようなことも考えながら 行なうようにしよう。最近比較的小振りのスピーカーでもフライングで使用できるものが多くなってきているのには そんな理由もあるからだ。
Atsushi Hirai; 2006-01-01 open; 2006-01-01 update Mail to